技術コラム Column
電解マーキングとレーザーマーキングの違い

金属部品の刻印に電解マーキング(電解腐食印字)を使っている現場から、「レーザーマーキングに切り替えるメリットはあるのか」というご相談をいただくことがあります。電解マーキングは設備が手軽で、小規模な刻印には今も有効な方法です。一方で、1個ずつ番号を変える、QRコードを入れる、仕上がりのばらつきをなくす、といった要求が出てくると、レーザーのほうが合う場面が増えます。この記事では、2つの方式の仕組みと違い、切り替えで得られること、切り替え前に確認したい点を、レーザー刻印を行う富山プレートが整理します。
電解マーキング(電解腐食印字)の仕組み
電解マーキングは、文字や図柄の部分だけが網目状に開いたステンシル(型紙)を金属の上に置き、電解液を含ませたパッドを押し当てて電流を流す方法です。開いた部分の金属表面だけが電気化学的に反応し、表示が現れます。
- 直流で流す(エッチング):表面がわずかに溶けて、浅い凹みとして表示されます。白っぽく、または灰色に見えることが多い仕上がりです。
- 交流で流す(マーキング):表面に酸化物ができ、黒っぽい表示になります。凹みはほとんどありません。
電気を通す金属が対象で、ステンレス、鉄、アルミ、真鍮などに使われます。樹脂や塗装面、アルマイトのような絶縁皮膜の上には基本的に使えません。
レーザーマーキングの仕組み
レーザーマーキングは、レーザー光を照射して表面を溶かす、削る、酸化させるなどして表示を入れる方法です。表示内容はデータで指定するため、ステンシルのような型はいりません。ステンレスなら表面を酸化させて黒く印字する方法と、表面を削って彫り込む方法があります。黒の出し方の違いはレーザーマーキングの「黒」は3種類あるで詳しく説明しています。
電解マーキングとレーザーマーキングの違い
表示内容の変更
電解マーキングは、表示を変えるたびにステンシルが必要です。同じロゴや社名を繰り返し入れるには向いていますが、製造番号を1個ずつ変える、日付を入れる、QRコードを入れるといった用途では、ステンシルの準備が負担になります。レーザーはデータを差し替えるだけで内容を変えられ、連番やQRコード、DataMatrixも続けて刻印できます。
仕上がりの安定性
電解マーキングは、パッドを押し当てる圧力や時間、電解液の状態、ステンシルの傷み具合によって濃さが変わります。手作業の場合は作業者による差も出ます。レーザーは出力や速度などの条件を数値で管理するため、同じ条件なら同じ仕上がりを再現しやすくなります。
細かさ
電解マーキングで細かい文字を入れることはできますが、ステンシルの網目やにじみの影響で、極小の文字や2次元コードは難しくなります。レーザーは数mm角のQRコードや微細な文字にも対応できます。
消耗品と後処理
電解マーキングでは、電解液、パッド(フェルト)、ステンシルが消耗品です。また、刻印後に電解液が残ると錆やシミの原因になるため、拭き取りや中和の後処理が欠かせません。レーザーは液体を使わず、消耗品はほとんどありません。ただし、加工によって煙や粉じんが出るため、集じん設備が必要です。
熱と素材への影響
電解マーキングは常温で行うため、熱による変形や変色が起こりません。薄い部品や熱に弱い部品には利点です。レーザーは熱を使う加工なので、条件によっては周囲の変色や、ステンレスの耐食性の低下が起こります。ステンレスの錆についてはステンレスはレーザーマーキングすると錆びる?で原因と対策をまとめています。
導入コストと場所
電解マーキングの装置は比較的安価で小型、持ち運べるものもあります。大きな構造物や現場に据え付けた設備に直接刻印できるのは電解マーキングの強みです。レーザーマーカーは導入費用が高く、レーザー光を扱うための安全対策(保護カバーや保護メガネ、管理区域の設定など)も必要になります。
レーザーに切り替えるメリットが大きいケース
- 製造番号やロット番号を1個ずつ変えて刻印したい
- QRコードやDataMatrixでトレーサビリティを取りたい
- 作業者によって濃さが違う、かすれる、といった品質のばらつきをなくしたい
- 電解液の後処理や、ステンシルの管理の手間を減らしたい
- 小さな部品に細かい文字を入れたい
反対に、同じ表示を少量だけ入れる、現場の大型設備に直接入れる、熱をかけたくない、といった条件では、電解マーキングを続けるほうが合理的な場合もあります。
切り替える前に確認したいこと
- 素材と表面状態:ステンレス、アルミ、メッキ、塗装など、表面によってレーザーの条件と仕上がりが変わります。
- 求める色とコントラスト:今の電解マーキングが黒い表示なら、レーザーでも黒く出したいのか、彫り込みでよいのかを決めます。
- 耐食性の要求:屋外や水回りで使うステンレス部品は、錆びにくい条件を選ぶ必要があります。
- その後の工程:刻印後に洗浄、塗装、熱処理がある場合は、その工程を経ても読めるかを確認します。
- 読み取り方法:目視だけか、コードリーダーで読むのかによって、必要な文字サイズやコードの大きさが変わります。
切り替え前には、実際の部品と同じ素材でテスト刻印をして、見た目と耐久性を確かめておくと安心です。耐久性の確かめ方はレーザーマーキングの耐久性はどう試験する?で解説しています。
設備を買わずにレーザー刻印を外注する方法
刻印する数量が多くない場合や、まず品質を確かめたい場合は、レーザーマーカーを導入せずに外注する方法もあります。部品を預けて刻印してもらう「支給品への刻印」なら、1個からでも依頼できます。導入を検討している場合も、外注で仕上がりとコストを確かめてから判断すると、設備選びの失敗を防げます。外注先の選び方はプレート加工業者の選び方も参考にしてください。
富山プレートの金属部品へのレーザー刻印
富山プレート(富山県上市町)では、お客様からお預かりした金属部品へのレーザー刻印を1個から承っています。キーエンス製のレーザーマーカーで、マーキング範囲は330×330mm、製品の高さ180mm以下・重さ20kg以下が目安です。製造番号を1個ずつ変える刻印や、QRコード・DataMatrixの刻印にも対応しています。電解マーキングからの切り替えを検討中の方は、現在の部品や刻印見本をお送りいただければ、テスト刻印でレーザーの仕上がりをご確認いただけます。支給品への刻印の詳細は支給材への刻印サービス、お問い合わせはお問合せフォームから承ります。