レーザーマーキングの耐久性はどう試験する?摩耗・薬品・塩水噴霧・耐候の試験方法と合否の決め方

レーザーマーキングは「消えない印字」と言われますが、実際にどのくらいの環境まで読める状態を保てるかは、素材、印字の方法、加工条件、使われる環境によって変わります。量産や設計に採用する前に、自社の使用環境で消えないかを確かめておく必要があります。この記事では、レーザーマーキングの印字が消えるリスクをどう評価するか、代表的な試験方法と合否の決め方、耐久性を高める方法を、銘板メーカーの富山プレートが解説します。

なぜ耐久性の試験が必要なのか

レーザーマーキングの耐久性は、印字の「深さ」と「中身」で決まります。ステンレスを黒く印字する方法は表面に薄い酸化膜をつくるもので、深さはほとんどありません。表面を削って彫り込む方法は、削った分だけ摩耗に強くなります。樹脂は素材の発色を利用するため、紫外線で色が変わることがあります。

同じ「レーザー刻印」でも中身が違うため、カタログ上の一般論だけで判断すると、現場で「思ったより早く薄くなった」ということが起こります。印字が消える代表的な原因はレーザーマーキングが消える原因と対策5選で整理しています。

試験を設計する手順

  1. 使用環境を書き出す:屋外か屋内か、油・洗浄剤・薬品・熱・摩擦・紫外線・塩分のうち何にさらされるか、何年読めればよいか。
  2. 試験項目を選ぶ:書き出した環境に対応する試験だけを選びます。すべての試験を行う必要はありません。
  3. 試験片を用意する:実際の製品と同じ素材、同じ表面処理、同じ加工条件で刻印したものを使います。加工条件(出力、速度、周波数など)は記録しておきます。
  4. 合否の基準を先に決める:「目視で読める」「コードリーダーで読める」「コントラストが初期値の何割以上」など、試験前に基準を決めます。
  5. 初期値を記録する:試験前の写真、コントラスト、コードの品質グレードを残しておきます。
  6. 試験・判定:試験後に同じ方法で測定し、基準と比べて判定します。

代表的な耐久性の試験方法

摩擦・摩耗試験

人の手や工具、ウエスで繰り返しこすられる表示に行います。布や消しゴムで決まった荷重をかけて往復させ、何回で読めなくなるかを見る方法が手軽です。より定量的に比べたい場合は、回転する摩耗輪を当てるテーバー摩耗試験などの規格化された方法を使います。彫り込みの印字と表面だけの黒化印字では、この試験で差が出やすくなります。

耐薬品・耐油試験

切削油、作動油、洗浄剤、アルコール、酸やアルカリなど、実際にかかる液体に試験片を浸すか、液を含ませた布で拭き取って変化を見ます。浸す時間や温度、拭き取りの回数を決めておくと、条件を変えたときに比べやすくなります。洗浄工程を通る部品は、実際の洗浄条件で試すのが確実です。

塩水噴霧試験

屋外、沿岸部、融雪剤がかかる場所で使う金属部品に行います。JIS Z 2371に規定された方法で塩水の霧を吹き付け、印字部分に錆が出ないか、錆で読めなくならないかを確認します。ステンレスの黒色印字は、条件によって周囲より錆びやすくなることがあるため、屋外向けでは特に確認しておきたい試験です。原因と対策はステンレスはレーザーマーキングすると錆びる?で解説しています。

促進耐候試験

紫外線や雨にさらされる表示に行います。キセノンランプやカーボンアーク灯で光を当て、水の噴霧を組み合わせて屋外の劣化を早めて再現します。金属の素地への刻印より、樹脂への印字や塗装面の剥離印字、インクを充填した印字で差が出やすい試験です。

耐熱・熱サイクル試験

エンジンまわりや炉の近く、熱処理工程を通る部品に行います。一定の温度で保持する試験と、高温と低温を繰り返す試験があります。素材の変色によって印字とのコントラストが下がらないかを確認します。

合否の決め方

  • 目視での読み取り:決めた距離と照明で、すべての文字が読めるかを確認します。人によって判断がぶれるため、判定者と条件をそろえます。
  • コントラストの測定:色差計などで、印字部と地の明るさの差を測り、初期値からの低下率で判定します。
  • 2次元コードの品質グレード:QRコードやDataMatrixは、検証機でISO/IEC 15415やISO/IEC 29158(金属などへの直接マーキング向け)に基づくグレードを測り、試験後も必要なグレードを保てるかで判定します。
  • 実際のリーダーでの読み取り:現場で使うスマートフォンやハンディリーダーで読めるかも、あわせて確認します。

コードの読み取りに関しては刻印したQRコードは何年読めるか、読み取り機器の違いは金属に刻印したQRコードを読む機器の選び方も参考にしてください。

試験結果を読むときの注意

促進試験の時間は、そのまま屋外の年数には換算できません。地域、設置の向き、汚れ方によって劣化の速さが変わるためです。促進試験は、複数の仕様を同じ条件で比べて、より強いほうを選ぶために使うと考えるのが現実的です。

また、試験片と量産品で加工条件が違えば、結果は当てはまりません。採用した条件を記録し、量産でも同じ条件で加工されるよう、発注先と共有しておくことが大切です。

印字の耐久性を高める方法

  • 彫り込みを深くする:摩耗に対しては、表面だけの印字より彫り込みのほうが強くなります。深く彫るほど時間とコストは増えます。
  • 素材や工法を変える:屋外で長く読ませたい表示は、陽極酸化皮膜の中に画像を封じ込めるメタルフォトや、黒色ステンレスのアベルブラックへのレーザー刻印も選択肢になります。
  • 印字条件を見直す:ステンレスの黒色印字は、条件によって耐食性への影響が変わります。
  • 取り付け位置を工夫する:直接こすられない位置や、油がたまらない位置に表示を置くだけで寿命が延びることがあります。

素材・工法ごとの強さの比較は銘板の耐環境性能を徹底比較、寿命の目安は銘板の耐用年数はどれくらい?で紹介しています。

富山プレートの試作・テスト刻印

富山プレート(富山県上市町)では、ステンレス、アルミ、真鍮などの金属や樹脂へのレーザーマーキングを、試作の1個から承っています。使用環境をお知らせいただければ、黒色印字、彫り込み、インク充填、メタルフォトなどから候補をご提案し、比較用の試験片を製作することもできます(試作は有償です)。お客様の部品への刻印にも対応していますので、耐久性の確認を含めてご相談ください。お問い合わせはお問合せフォームから承ります。

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