塗装済み部品・粉体塗装面へのレーザーマーキング|塗膜を剥離して表示を出す方法と注意点

塗装済み部品・粉体塗装面へのレーザーマーキング|塗膜を剥離して表示を出す方法と注意点

「塗装が終わった筐体に、あとから型番と製造番号を入れたい」「粉体塗装した制御盤の扉に、シールではなく直接表示を入れたい」。板金・制御盤・装置メーカーの方から、こうしたご相談をいただきます。

塗装面へのレーザーマーキングは、塗膜だけをレーザーで取り除き、下の金属素地を露出させて表示を出す方法です。シールのように剥がれず、銘板を貼るための平面も不要ですが、塗装という「あとから付けた層」を相手にするため、金属素地への直接刻印とは違う注意点があります。

富山プレートは、富山県上市町で創業以来50年以上、工業用銘板と精密薄板加工を手がけてきました。お客様から部品をお預かりして刻印する支給材加工にも対応しており、塗装済み部品への表示についてもご相談いただいています。このコラムでは、塗膜剥離マーキングの仕組み、塗装の種類による違い、失敗しやすい点と対策を解説します。

塗膜剥離マーキングの仕組み

レーザーを塗装面に当てると、塗膜がエネルギーを吸収して蒸発・分解し、その下の素地が現れます。出てくる表示の色は素地の色です。黒塗装のステンレスなら白銀色、黒塗装のアルミなら銀色、黒塗装の鉄なら鉄の地色になります。

削るのは塗膜の厚み分だけなので、素地に深い溝は入りません。指で触ると塗膜の段差をわずかに感じる程度です。黒地に白文字を出す素材としての位置づけは黒アルマイト・アベルブラック・黒塗装の違いの記事で比較しています。

塗装後に剥離するか、塗装前に刻印するか

実は、塗装部品に表示を入れる方法は2つあります。

  • 塗装後に塗膜を剥離する:本記事の主題。塗装済みの部品にそのまま加工でき、表示は素地色で出る
  • 塗装前に素地へ刻印し、塗装で埋める:彫り込んだ溝が塗膜で埋まり、表示が塗装の凹凸として残る。読みにくいため、あとから溝の塗膜を剥離するか、インク充填する工程が必要

後者は工程が増えるため、塗装後の剥離のほうが一般的で、コストも抑えやすい方法です。

塗装の種類で仕上がりが変わる

焼付塗装(溶剤系・メラミン・アクリルなど)

塗膜が比較的薄く、レーザーで剥離しやすい塗装です。文字の縁もきれいに出やすく、塗装面マーキングの中では最も安定します。

粉体塗装(パウダーコート)

制御盤や産業機器の筐体で多い塗装です。塗膜が厚く、硬いため、剥離に必要なエネルギーが大きくなります。条件が合わないと塗膜の縁が焦げて黒ずんだり、剥離面の底に塗膜が残って表示が薄くなったりします。塗膜の厚みがロットや塗装業者によってばらつきやすい点にも注意が必要です。

電着塗装・カチオン塗装

下塗りとして使われることが多く、単体では薄い塗膜です。上塗りと組み合わされている場合、上塗りだけを剥離して下塗りの色を出す、あるいは両方剥離して素地を出す、という選択が生じます。狙う色を事前に決めておく必要があります。

2層以上の塗装

プライマーの上に色塗装、さらにクリアが乗っている場合など、層ごとに剥離のしやすさが異なります。上層だけを狙って剥離すると、出てくるのはプライマーの色(グレーやベージュが多い)です。「白文字のつもりがグレーになった」という行き違いが起こる典型的なケースです。

粉体塗装された制御盤扉へのレーザーマーキング事例

失敗しやすい点と対策

1|塗膜の縁が焦げる

塗膜が厚い、あるいは有機系の塗料は、剥離時の熱で縁が炭化して黒ずむことがあります。文字の輪郭が汚れて見える原因です。出力・走査速度・周波数の条件を塗膜に合わせて調整することで抑えられますが、塗膜厚が分からない状態では最適条件を決められません

2|剥離面に塗膜が残る

逆に条件が弱いと、底に塗膜の薄い層が残り、素地の色が十分に出ません。表示が薄いグレーに見える原因になります。粉体塗装で起きやすい症状です。

3|素地が露出して錆びる

剥離した文字部分は塗装の保護を失います。素地がステンレスやアルミなら大きな問題になりにくいですが、鉄(SPCC・SECCなど)の場合は文字部分から錆が発生します。屋外や湿度の高い環境では、剥離後にクリア塗装を上掛けするか、鉄素地への剥離マーキング自体を避ける判断が必要です。

4|大物・曲面で位置が決まらない

制御盤の扉のような大きな部品や、曲面のある筐体は、レーザー加工機のテーブルに載るか、焦点距離を保てるかという物理的な制約があります。大きさ・形状によっては、部品そのものではなく、同じ塗装を施した小さなプレートを別途製作して貼る方が現実的な場合もあります。

きれいに仕上げるために事前に決めておくこと

  1. 塗装の種類と塗膜厚:塗装仕様書があれば共有。分からなければ、同じ塗装の端材や不良品を1つ添えていただくと、テストマーキングで条件を決められる
  2. 素地の材質:出てくる表示の色と、錆のリスクが決まる
  3. 狙う表示色:素地色でよいか、プライマー色でよいか、あるいは別の色が必要か
  4. 使用環境:屋外・湿気・薬品の有無で、剥離後の保護の要否が変わる
  5. 部品の大きさと加工位置:加工機に載るか、焦点が保てるか

支給材加工の基本的な流れは支給材への刻印サービスの記事にまとめています。

塗装面に「色のある表示」を入れたい場合

塗膜剥離で出せるのは素地の色だけです。塗装面に白・赤・黄などの色付きの表示や、多色の警告表示を入れたい場合は、レーザーではなくUVインクジェット印刷で塗装面に直接印刷する方法があります。密着性は塗装の種類に左右されるため、こちらもテスト印刷を前提にご相談ください。

剥離マーキングとUV印刷を組み合わせ、型番はレーザーで剥離、警告表示はUV印刷で色付け、という使い分けも可能です。

用途別の目安

  • ステンレス・アルミの塗装筐体に型番・シリアルを入れる → 塗膜剥離マーキング
  • 鉄の塗装筐体、屋内使用 → 塗膜剥離マーキング(湿気が少ない前提)
  • 鉄の塗装筐体、屋外・高湿 → 剥離後にクリア上掛け、または別体の銘板を貼る
  • 色付き・多色の表示が必要 → UV印刷、または別体の銘板
  • 部品が大きすぎる・曲面で加工できない → 同色塗装の小プレートを別製作して貼付

別体の銘板で対応する場合、粉体塗装面への貼り付けは接着不良が起こりやすいため、接着不良が起こる面と対策の記事もあわせてご確認ください。

まとめ|塗膜の情報が仕上がりを決める

塗装面へのレーザーマーキングは、塗膜の種類・厚み・層構成が分かっていれば、シールに頼らない消えない表示を塗装済み部品に直接入れられる有効な方法です。逆に塗膜の情報がないまま加工すると、縁の焦げや表示の薄さといった仕上がりのばらつきにつながります。

富山プレートでは、塗装済みの支給部品へのテストマーキングから、条件出し、本加工、色付き表示が必要な場合のUV印刷まで対応しています。「この塗装に文字が入るか」という段階からご相談ください。

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