技術コラム Column
ステンレスはレーザーマーキングすると錆びる?原因と錆びさせないための4つの対策

「錆びないはずのステンレスが刻印部分から錆びた」は起こりうる
ステンレスは錆びにくい素材として知られていますが、レーザーマーキングを施した部分から錆が発生することがあります。「ステンレス製の銘板やタグを刻印したら、数か月後に文字の周りが茶色く変色した」というご相談は、実際に少なくありません。
この記事では、なぜステンレスがレーザーマーキング後に錆びるのか、その原因と、製作段階で錆びさせないための対策を、ステンレスへの刻印を日常的に手がける富山プレートが解説します。
ステンレスが錆びない理由と、レーザーがそれを壊す仕組み
ステンレスが錆びにくいのは、表面のクロムが空気中の酸素と結びついて「不動態皮膜」というごく薄い保護膜を作っているからです。この膜が傷ついても、周囲のクロムがあれば自然に再生します。
問題は、レーザーマーキングが熱で表面を加工する点にあります。レーザーの熱によって、次の2つのことが起こります。
- 不動態皮膜が破壊され、下の金属が露出する
- 加熱された部分でクロムが炭素と結びつき、周囲のクロム濃度が下がって皮膜が再生しにくくなる(鋭敏化)
つまり、レーザーの当て方によっては「保護膜がなく、しかも再生もしにくい」状態の部分ができてしまい、そこから錆が始まります。研究報告でも、錆はレーザー照射部の縁から発生する傾向が確認されています。
錆びやすいマーキングと錆びにくいマーキングの違い
同じ「レーザーマーキング」でも、方式によって錆のリスクは大きく異なります。
黒色マーキング(アニーリング):錆びにくい
表面を削らず、低めの出力で加熱して薄い酸化膜を発色させる方式です。黒く見えるのは酸化膜の干渉色で、金属の表面はほぼ平滑なまま残ります。不動態皮膜への影響が比較的小さく、条件を適切に管理すれば耐食性を大きく損ないません。ステンレスの銘板・タグでは、この方式が第一選択になります。
彫刻・エッチング(表面除去):錆びやすい
表面を削り取って凹みを作る方式です。彫った部分は不動態皮膜が完全になくなり、削りカスや溶融した金属が凹みの縁に残りやすいため、そこが錆の起点になります。深い彫り込みや、彫ってからインクを充填する加工では、後述の防錆処理が必須と考えてください。
出力が強すぎる場合:どちらの方式でも錆びやすい
黒色マーキングでも、出力が高すぎたり走査速度が遅すぎたりすると、熱影響が深くまで及び、鋭敏化が進みます。「はっきり黒くしたい」と出力を上げるほど錆のリスクが上がるため、コントラストと耐食性はトレードオフの関係にあります。
錆びさせないための4つの対策
対策1:用途に合った方式を選ぶ
耐食性を優先するなら黒色マーキング、摩耗に強い深い刻印が必要なら彫刻+防錆処理、と使い分けます。屋外・海沿い・薬品環境で使うステンレス銘板は、まず黒色マーキングで検討するのが基本です。
対策2:加工条件を熱影響の少ない範囲に抑える
出力・周波数・走査速度を、必要なコントラストが得られる最小限の熱量に調整します。富山プレートでは素材の板厚や表面仕上げ(2B、ヘアライン、鏡面など)に応じて条件を変えており、初めての材料ではテストピースで発色と耐食性のバランスを確認しています。
対策3:マーキング後に洗浄・不動態化処理を行う
加工後に表面に残った酸化物や金属粉を洗浄し、必要に応じて不動態化処理(硝酸などで不動態皮膜を再生させる処理)を施すと、耐食性が回復します。彫刻方式や、厳しい環境で使う製品では、この工程を入れることで錆のリスクを大きく下げられます。
対策4:素材の選定を見直す
一般的なSUS304に対し、モリブデンを含むSUS316は塩分や薬品に対する耐食性が高く、レーザー加工後の錆にも強い傾向があります。海沿いや食品・薬品を扱う現場で使う場合は、加工条件だけでなく素材のグレードから検討してください。
すでに錆びてしまった場合の対処
刻印部分に軽い錆(もらい錆や点状の変色)が出た場合は、中性洗剤で洗浄した後、ステンレス用の錆取り剤で除去できることがあります。ただし研磨材入りのクリーナーで強くこすると、黒色マーキングの酸化膜ごと落ちて文字が薄くなるため注意が必要です。錆が深く進行している場合は再製作をおすすめします。
富山プレートのステンレス刻印対応
富山県上市町の富山プレートでは、ファイバーレーザーによるステンレスへの黒色マーキング、彫刻、QRコード刻印を1枚から製作しています。使用環境をお聞きしたうえで方式と加工条件をご提案し、必要に応じて防錆処理まで対応します。屋外や薬品環境でステンレス銘板をご検討の際は、設置場所の条件とあわせてご相談ください。
マーキングとエッチングの基本的な違いはステンレスへのレーザーマーキングとエッチングの違いの記事、刻印が薄くなる原因全般はレーザーマーキングが消える原因と対策の記事、黒色素材の比較は黒アルマイト・アベルブラック・黒塗装の比較記事もあわせてご覧ください。
まとめ
ステンレスがレーザーマーキング後に錆びるのは、熱によって不動態皮膜が壊れ、再生しにくくなるためです。黒色マーキング方式を選び、熱影響を抑えた条件で加工し、必要に応じて洗浄・不動態化処理を行えば、錆のリスクは大きく下げられます。ステンレスへの刻印でお困りの際は、お問い合わせフォームからご相談ください。