レーザーマーキングが消える原因と対策5選

レーザーマーキングで刻印した銘板の文字が、数年で薄くなった・消えてしまった——そんなトラブルを経験したことはないでしょうか。レーザーマーキングは高い耐久性が特徴ですが、加工条件や素材選定、使用環境によっては印字が劣化するケースがあります。

この記事では、レーザーマーキングが消える5つの原因と、耐久性を高めるための具体的な対策を解説します。銘板・工業プレート加工に40年以上の実績を持つ当社が、現場のノウハウをもとにお伝えします。

レーザーマーキングの仕様や耐久性についてお急ぎのご相談は、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。

レーザーマーキングの劣化メカニズム:退色・腐食・摩耗の3パターンを示す技術図解

レーザーマーキングは本当に消えるのか

印字が劣化する3つのパターン

レーザーマーキングの劣化は、大きく分けて以下の3パターンに分類されます。

  • 退色・変色:酸化膜で発色したカラーマーキングが、紫外線や熱で色が抜けるケース
  • 腐食による消失:マーキング周辺の金属が腐食し、刻印ごと侵食されるケース
  • 物理的摩耗:接触や摩擦により、浅い刻印が徐々に削れるケース

いずれも「レーザーマーキングそのものが弱い」のではなく、加工条件・素材・環境の組み合わせに起因します。適切な仕様を選べば、10年以上の耐久性を持たせることも十分に可能です。

素材ごとの耐久性の違い

レーザーマーキングの耐久性は、素材によって大きく異なります。

素材 マーキング方式 屋内耐久性 屋外耐久性
ステンレス(SUS304) アニーリング / 深彫り ◎(半永久) ○(10年以上)
アルミ(メタルフォト) 感光・現像方式 ◎(半永久) ◎(20年以上)
アルミ(アルマイト処理) 酸化膜除去 ○(10年以上) △(5〜8年)
樹脂(ABS・PBT等) 発泡 / 炭化 ○(5〜10年) △(3〜5年)
真鍮 深彫り ○(10年以上) △(変色リスクあり)

ステンレスやメタルフォトは屋外環境にも強い一方、樹脂や真鍮は使用環境によって耐久年数が大きく変わります。当社のレーザーマーキング技術ページでは、各素材への対応力を詳しくご紹介しています。

レーザーマーキングが消える5つの原因を示すインフォグラフィック

レーザーマーキングが消える5つの原因

原因①|加工条件(出力・速度)の不適合

レーザーの出力が低すぎる、または走査速度が速すぎると、素材表面への加工深さが不十分になります。特に金属素材では、深さ0.01mm未満のマーキングは摩耗で消えやすくなります。反対に出力が過剰だと、素材が熱変形し刻印品質が低下する場合もあります。

原因②|素材と方式のミスマッチ

レーザーマーキングには、アニーリング(酸化膜形成)、エッチング(除去加工)、深彫り、炭化など複数の方式があります。素材ごとに最適な方式は異なり、例えばステンレスにアニーリング方式を使えば耐食性を保てますが、エッチング方式で不動態膜を破壊すると錆びの原因になります。

方式ごとの特徴の違いについては、レーザーマーキングとエッチングの違いのコラムで詳しく解説しています。

原因③|表面処理後の刻印(膜の上からの加工)

塗装・めっき・アルマイト処理の上からレーザーマーキングを行うと、表面の皮膜のみが加工され、母材には到達しません。その結果、皮膜が劣化・剥離した際に刻印ごと消えてしまいます。逆に、マーキング後に表面処理を施す工程順であれば、刻印が保護されて耐久性が向上します。

原因④|屋外・薬品環境での腐食

塩害地域、高温多湿環境、薬品が飛散する工場内では、レーザーマーキング箇所が優先的に腐食するリスクがあります。特にエッチング方式では素材表面の保護膜(不動態膜)を除去するため、マーキング部分だけ錆びが進行することがあります。

原因⑤|物理的な摩耗・接触

組立作業中の接触、振動による部品同士の擦れ、清掃時の研磨剤使用などにより、浅いマーキングは消失します。特に工作機械の操作パネル周辺や、搬送中に他部品と接触する銘板では、加工深さの確保が重要です。

原因 ステンレス アルミ 樹脂 真鍮
①加工条件の不適合 ○ 影響中 ○ 影響中 ◎ 影響大 ○ 影響中
②素材と方式のミスマッチ ◎ 影響大 ○ 影響中 ○ 影響中 ○ 影響中
③表面処理後の刻印 ○ 影響中 ◎ 影響大 △ 影響小 ○ 影響中
④屋外・薬品環境の腐食 ○ 影響中 △ 影響小 ◎ 影響大 ◎ 影響大
⑤物理的な摩耗 △ 影響小 ○ 影響中 ◎ 影響大 ○ 影響中

◎ = 特に注意が必要 ○ = 一定のリスクあり △ = リスクは小さい

耐久性の高いレーザーマーキング対策ソリューションの比較図

消えにくいレーザーマーキングにする5つの対策

対策①|深彫り加工で物理的耐久性を確保する

加工深さを0.05mm以上に設定する「深彫り加工」を行えば、物理的な摩耗や接触に対する耐久性が格段に向上します。通常のマーキングが0.001〜0.01mm程度なのに対し、深彫りでは5〜50倍の深さを確保できます。工作機械や産業機械のように過酷な環境で使われる銘板には、深彫り加工が推奨されます。

対策②|アニーリング方式で耐食性を維持する

アニーリング方式は、レーザーの熱で素材表面に酸化膜を形成し、色の変化でマーキングを行う方法です。素材表面を削らないため不動態膜が保たれ、ステンレスの耐食性を損ないません。黒色〜茶色のコントラストが得られ、医療機器や食品機械など衛生管理が求められる銘板に適しています。

対策③|素材選定の見直し(SUS・メタルフォト等)

使用環境が過酷な場合、素材そのものを見直すことが最も効果的です。SUS316(耐酸性に優れたステンレス)や、メタルフォト(アルミ基材に感光層を定着させた高耐候性素材)は、屋外20年以上の耐久実績があります。メタルフォトの詳細は高耐久アルミ銘板「メタルフォト」の魅力と活用例をご覧ください。

対策④|後処理(LHコート・クリアコート)の追加

レーザーマーキング後にLHコートやクリアコートを施すと、刻印面を物理的・化学的に保護できます。LHコートは耐薬品性・耐候性に優れた特殊コーティングで、屋外や薬品環境での使用に適しています。コーティングの選び方についてはなぜLHコートが工業銘板に向いているのかで解説しています。

対策⑤|使用環境に合った仕様書を作成する

発注時に使用環境(屋内/屋外、温度範囲、薬品の有無、接触頻度)を仕様書に明記しておくことで、加工メーカー側が最適な方式・素材・後処理を提案できます。「銘板が消えた」トラブルの多くは、使用環境の情報が加工時に共有されていないことが原因です。

対策 効果 コスト 推奨シーン
①深彫り加工 摩耗に強い やや高 工作機械・産業機械の銘板
②アニーリング方式 耐食性維持 標準 医療・食品機械の銘板
③素材変更(SUS316・メタルフォト) 長期耐候性 屋外・塩害環境の銘板
④LHコート・クリアコート 化学的保護 やや高 薬品工場・半導体装置
⑤仕様書の整備 ミスマッチ防止 無料 全ての発注に推奨

レーザーマーキングの耐久性にお悩みの方は、使用環境と素材をお伝えいただければ最適な仕様をご提案いたします。お問い合わせはこちらからどうぞ。

レーザーマーキング仕様選定のための素材別決定マトリックス

素材別|消えにくい仕様の選び方

ステンレス(SUS304・SUS316)

工業銘板で最も多く使われる素材です。SUS304は汎用性が高く、屋内環境であればアニーリング方式で十分な耐久性が得られます。塩害や薬品環境にはSUS316が適しています。深彫り+アニーリングの併用で、最も高い耐久性を実現できます。当社ではファイバーレーザ加工機による高精度なステンレスマーキングに対応しています。詳しくは設備一覧をご覧ください。

アルミ(メタルフォト・アルマイト処理材)

メタルフォトは銀塩写真の原理をアルミに応用した素材で、屋外耐候性20年以上の実績があります。画像や二次元コードの再現性が高く、設備銘板やQRコードプレートに多く採用されています。アルマイト処理材は酸化膜を除去する方式でマーキングするため、屋外ではクリアコートの追加を推奨します。

樹脂(ABS・PBT・ポリカーボネート)

樹脂へのレーザーマーキングは、発泡(白色マーキング)や炭化(黒色マーキング)で行います。耐久性は金属素材と比較するとやや劣りますが、配電盤の表示板や操作パネルなど屋内用途では十分な実用性があります。樹脂銘板で印刷精度が求められる場合は、UVインクジェット印刷との使い分けも検討に値します。

使用環境 推奨素材 推奨方式 推奨後処理
屋内・一般環境 SUS304 / アルマイトアルミ アニーリング 不要
屋内・摩耗環境 SUS304 深彫り 不要 or LHコート
屋外・一般環境 メタルフォト / SUS316 深彫り + アニーリング クリアコート推奨
屋外・塩害環境 SUS316 / メタルフォト 深彫り LHコート必須
薬品・高温環境 SUS316 深彫り LHコート必須
屋内・配電盤等 樹脂(PBT等) / アクリル 炭化 / UV印刷 不要

よくあるご質問

Q1. レーザーマーキングの耐久年数はどれくらいですか?

素材と方式によって異なります。ステンレスへの深彫り加工であれば半永久的に持続します。メタルフォトは屋外でも20年以上の耐久実績があります。樹脂素材は屋内5〜10年、屋外3〜5年が目安です。使用環境をお伝えいただければ、最適な仕様とともに耐久年数の目安をご案内いたします。

Q2. 屋外銘板にレーザーマーキングは使えますか?

使えます。ただし素材と後処理の選定が重要です。屋外用途にはメタルフォトまたはSUS316への深彫り加工が推奨されます。さらにLHコートやクリアコートを追加することで、塩害地域や直射日光下でも長期間の耐久性を確保できます。

Q3. 既存銘板の刻印が消えた場合、再マーキングは可能ですか?

可能です。既存の銘板をお送りいただき、表面を再研磨した上でレーザーマーキングを施す対応を行っています。ただし素材の状態によっては新規製作のほうが品質・コスト面で有利な場合もあります。まずは現物の状態をご相談ください。

Q4. エッチングとレーザーマーキング、耐久性に差はありますか?

加工深さが同等であれば、耐久性に大きな差はありません。ただしエッチングは化学薬品で溶解するため加工深さのコントロールにばらつきが出やすい一方、レーザーマーキングはデジタル制御で均一な深さが得られます。この違いについてはレーザーマーキングとエッチングの違いで詳しく解説しています。

まとめ

  • レーザーマーキングが消える原因は、加工条件・素材選定・使用環境のミスマッチにある
  • 深彫り加工、アニーリング方式、適切な素材選定、後処理コートで耐久性は大幅に向上する
  • 発注時に使用環境を仕様書で共有することが、トラブル防止の最も効果的な手段である

レーザーマーキングの耐久性は、正しい仕様を選ぶことで解決できる課題です。「どの方式が最適かわからない」「既存銘板の印字が消えてきた」といったお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

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関連コラム

【参考文献】

  1. JIS B 7532:2015「レーザマーキングの用語」日本規格協会
  2. JIS Z 2381:2017「大気暴露試験方法通則」日本規格協会
  3. レーザ加工学会誌「金属材料へのレーザマーキング技術の動向」
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