なぜLHコートが工業銘板に向いているのか

工作機械や製造装置の現場では、操作パネルや配電盤に貼付される銘板・プレートが日々、過酷な環境にさらされています。頻繁に触れられ、拭き掃除が行われ、油や溶剤が付着する—そんな環境でも、表示内容がはっきりと読み取れることが求められます。

そこで注目されているのが、LHコート(ハードコートPET)を使用した銘板です。本記事では、LHコートがなぜ工業用途に適しているのか、そしてUV硬化インクジェット印刷との組み合わせで実現できる、コストと品質を両立した銘板製作についてご紹介します。

1. 工業用銘板での使用シーン

LHコート(ハードコートポリエステルフィルム)は、工作機械や製造装置の現場で、次のような場所に多く使用されています。

主な使用場所

  • 工作機械のコントロールパネル銘板
    表示・注意表記・操作ガイドを一体化し、操作性と視認性を両立します。
  • 製造ラインの操作ボタン周りの警告銘板・注意ラベル
    頻繁に触れる箇所でも文字や表示が劣化しにくい特性があります。
  • QRコード銘板・管理番号表示
    読み取り精度が求められる管理用表示物として活用されています。

実際の採用事例:

LHコート(PETフィルム)へフルカラー印刷を行い、工作機械向けのコントロールパネル銘板や、操作ボタン周辺の警告銘板として採用されている事例が増えています。特に、製造現場での耐久性と視認性が評価されています。

2. なぜLHコートが工業銘板に向いているのか

工業用途の銘板は、「触る・拭く・擦れる・油が付着する」という過酷な環境で使われることが前提です。LHコートは、こうした環境に耐えうる特性を備えています。

LHコートの主な特長

特性 詳細
表面処理 ハードコート処理を施したPETフィルム
耐スクラッチ性 擦り傷に強く、文字や表示の劣化を防ぐ
耐摩耗性 頻繁な接触や清掃作業にも耐える
耐油性 機械油や切削油が付着しても劣化しにくい
耐溶剤性 工業用洗浄剤にも対応
軽量・薄型 金属銘板と比較して軽量で取り扱いが容易

これらの特性により、操作パネルや配電盤など人の手や清掃が頻繁に入る箇所でも、表示の視認性を長期間維持しやすい素材となっています。

ハードコートPETフィルムとは

ハードコートPETフィルムは、ポリエステルフィルム(PET)の表面に特殊なハードコート層を形成したフィルムです。このコーティングにより、通常のPETフィルムと比較して優れた表面特性を実現しています。

製造工程では、PETフィルムの表面にアクリル系のハードコート剤を塗布し、UV照射によって硬化させることで、硬度の高い保護層を形成します。この処理により、フィルム本来の透明性や柔軟性を保ちながら、表面の耐久性を大幅に向上させることができます。

工業用途での実績

LHコートは、メンブレンスイッチやキーパッドなどの電子機器部品から、工作機械の操作パネル、配電盤の銘板まで、幅広い工業用途で長年の実績があります。特に、以下のような環境での使用に適しています。

  • 製造現場での頻繁な操作が必要な箇所
  • 油や切削液が飛散する環境
  • 定期的な清掃・消毒が必要な場所
  • 屋内での長期使用が想定される設備

金属銘板との使い分け:

金属銘板(アルミ、ステンレスなど)は耐久性に優れていますが、重量があり、加工コストも高くなる傾向があります。一方、LHコートを使用した銘板は、金属銘板ほどの厚みや重量が不要なケースで、軽量・薄型・高耐久な表示材として選ばれています。設置場所や用途、予算に応じた素材選定が重要です。

3. UV硬化インクジェット印刷のメリット

LHコートを使用した工業用銘板・配電盤用銘板は、UV硬化インクジェット印刷での製作が可能です。この印刷方法は、従来のシルク印刷と比較して多くのメリットがあります。

UV硬化インクジェット印刷の特徴

  • 版代が不要
    データから直接印刷できるため、初期コストを大幅に削減できます。
  • 小ロット・多品種に対応
    1枚から製作可能で、機種ごとに表記が異なる場合でも柔軟に対応できます。
  • 可変データに強い
    管理番号・QRコード・シリアルナンバーを個別に変えることが容易です。
  • フルカラー・グラデーション表現が可能
    複雑なデザインやカラーバリエーションも追加コストなしで実現できます。
  • 短納期対応
    UV光で瞬時に硬化するため、乾燥時間が不要で納期を短縮できます。
  • 環境に優しい
    溶剤を使用せず、VOC(揮発性有機化合物)の発生がほとんどありません。

UV硬化の仕組み

UV硬化インクジェット印刷では、特殊なUVインクを使用します。このインクは、紫外線(UV光)を照射されると瞬時に化学反応を起こし、液体から固体へと変化します。

印刷プロセスは以下のように進行します。

  1. インクジェットヘッドから素材表面にUVインクを吐出
  2. インク着弾直後にUVランプで紫外線を照射
  3. インクが瞬時に硬化し、素材表面に定着

この仕組みにより、従来のインクのように「乾燥を待つ」必要がなく、印刷後すぐに次の工程へ進むことができます。これが短納期を実現する大きな要因となっています。

工業用銘板での実用性

工業用銘板の製作において、UV硬化インクジェット印刷は次のような実務課題を解決します。

現場の課題 UV硬化インクジェットでの解決
試作段階で頻繁に仕様変更が発生 データ修正のみで対応、版の作り直しが不要
機種ごとに微妙に表記が異なる 各機種用のデータを用意して個別印刷
少量のみ必要だが在庫は持ちたくない 必要な枚数だけをオンデマンドで製作
QRコードや管理番号を個別に印字したい 可変データ印刷で1枚ごとに異なる情報を印字
納期が短く、急ぎで必要 版製作が不要で即日対応も可能

4. シルク印刷との違い

従来のシルク印刷と比較することで、UV硬化インクジェット印刷の優位性がより明確になります。

項目 シルク印刷 UV硬化インクジェット印刷
初期コスト 色数ごとの版代が必要 版代不要
小ロット対応 コスト増 1枚から対応可能
デザイン変更 再製版コストが発生 データ修正のみで対応
色数 色数ごとに版が必要 フルカラー対応
可変印刷 都度版が必要 自由に変更可能
納期 版製作に時間が必要 短納期対応可能
グラデーション 困難 容易に表現可能

UV硬化インクジェットが特に適しているケース:

  • 1枚から製作したい
  • 機種ごとに表記が異なる
  • 管理番号・QRコードを個別に変えたい
  • 試作段階で仕様変更が多い
  • 多品種少量生産が必要

※最終的な耐久性は、インク種・下地処理・使用環境・貼り付け方法などの設計によって変わります。用途に応じた適切な仕様設計が重要です。

5. 配電盤用銘板での使用について

配電盤まわりでは、保守・点検作業のしやすさから、次のような特性を持つ表示が求められます。

配電盤用銘板に求められる要件

  • 薄くて邪魔にならない
    限られたスペースでも設置しやすい薄型設計
  • 視認性が高い
    暗い場所や斜めからでも読み取りやすい表示
  • 剥がれにくく、擦れに強い
    頻繁な開閉や清掃作業にも耐える粘着力と耐久性

配電盤用途での設計ポイント

検討項目 選択肢・考慮点
固定方法 粘着タイプ、結束・タグタイプ、ビス止めなど用途に応じて設計可能
視認性 マット・グロス仕上げ、ヘーズ(曇り具合)など用途別に選定
メンテナンス性 清掃・摩耗・洗浄剤使用を想定した素材選び
表示内容 回路名、電圧表示、警告表示、QRコードなど

採用事例:

LHコートを使用した配線用銘板(タグタイプ)や、盤面に貼り付ける銘板シールとしての採用例があります。特に、電気工事や保守点検の現場で、耐久性と視認性が評価されています。

これらを踏まえ、LHコート+UV硬化インクジェットは、配電盤・制御盤の表示用途において、コストと柔軟性を両立できる現実的な選択肢といえます。

6. まとめ・結論

工業用銘板の製作においては、使用環境や求められる性能によって、最適な素材と印刷方法が異なります。多くの種類や加工方法があり、業界により求められるものが違うため、用途に応じた適切な選定が重要です。

LHコート(ハードコートPET)は、耐久性と視認性、そしてコストパフォーマンスのバランスに優れた素材として、工作機械や配電盤をはじめとする工業用途で広く採用されています。

この記事の要点

  • LHコートは工業環境に適した高耐久PETフィルムで、耐スクラッチ性・耐摩耗性・耐油性・耐溶剤性に優れています
  • 操作パネル・警告銘板・配線表示など幅広く対応し、様々な工業用途で使用されています
  • UV硬化インクジェット印刷により版代不要で、初期コストを大幅に削減できます
  • 小ロット・多品種・仕様変更に強く、可変データ印刷やQRコード印刷にも柔軟に対応できます
  • 工業用銘板・配電盤銘板の現実的で使いやすい製作方法として、コストと品質を両立できます

株式会社富山プレートについて

株式会社富山プレートは、1973年創業、50年以上の実績を持つ銘板・プレート製造の専門企業です。

  • UV硬化インクジェット印刷設備を完備
  • レーザーマーキング・薄板加工にも対応
  • 小ロットから大量生産まで柔軟に対応
  • ISO9001:2015認証取得による品質管理体制

工業銘板・配電盤銘板・操作パネル銘板など、お客様のニーズに合わせた最適な提案をいたします。お気軽にご相談ください。

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